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 ベートーヴェンの不滅の恋人の話、知っていますか。この話、私は友人の音楽評論家から聞きました。第九との関係もあるようなのです。既に存知の方もおられると思いますが、以下に私の知見を記します。

 ベートーヴェンに不滅の恋人とされる人がいた。そしてそれが誰かを約50年前に指摘したのは青木やよひという日本人女性で、現在それは定説となっている。その青木やよひの著書を読んでみた。
 話は謎の手紙の発見から始まる。ベートーヴェンの死亡は1827年3月26日であるが、死後、彼の秘密の引き出しの中に、銀行株券と共に女性の肖像画のミニチュア2点と、ベートーヴェン自身の文書(恋文の手紙)があった。その手紙の中で相手を不滅の恋人unsterbliche Geliebteと呼んでいる。そしてその手紙は相手の女性の鉛筆で書かれていた。
 さてその手紙(恋文)の宛先人は誰かについて、永年論争が続けられていた。世界的巨人とされるベートーヴェンの情熱と苦悩にみちた愛の告白、その恋人とは誰だったのか。
 ベートーヴェンは知名度が上がると、多くの貴族や貴婦人たちと交際するようになった。そして同時代の巨人ゲーテとの交友もあり、また苦悩の日々にはカントの哲学書を読んだりしており、恋愛も肉体的なことより精神的な面に重きをおいていたようである。そして、青木やよひなる探究者は、女性の視点から男女間の心情的変化の機微にふれる問題を推察し探究してゆくところにも説得力がある。

アントーニエ・ブレンターノ像
 青木やよひ氏が“不滅の恋人”と推論したアントーニエ・ブレンターノの像


 ベートーヴェンは恋愛という人間の情念から出発して、幾多の苦悩(恋人は高貴な人妻で、遂にはそれぞれに思いがけない出来事が起こり、結末を迎え、その後、彼女はベートーヴェンの生涯の親友となる)を、真撃に、正面からぶつかってそれを乗り越え、人間的により深みを得、筆者青木やよひの言葉を借りれば、自我の限界を超えて普遍的人間性へ、さらに星空の彼方の宇宙的まなざしを獲得した。こうした経験があって第九交響曲の壮大さや深みを持ちえたのではないか、と思われる。ちなみに、ベートーヴェンがシラーの詩を知って作曲を思い立ったのが22歳、不滅の恋人の経験が40歳前後、そして第九の完成が54歳である。
 不滅の恋人の問題を追究するということは、筆者青木やよひの言葉を再度借りれば、手紙の宛名人を割り出すという単なる謎ときの興味だけではなく、生涯にわたり変遷発展するベートーヴェンの魂のドラマに光を当てること、そう思われる。  (バス 橋本明政)

文献
・青木やよひ『決定版、ベートーヴェン"不滅の恋人"の探究』(平凡社ライブラリ、2007.1初版)
青木やよひ「ベートーヴェン《不滅の恋人》研究の現在」 (2001年10月16日に国立音楽大学で行われたシンポジウムとコンサート「ベートーヴェン最後の恋」の基調講演とシンポジウムのために用意された覚えがきをもとに新たに書き下ろしたもの)

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