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バスの桐田です。
長老の福間信彦さんが「トスカニーニのベートーヴェン観」を先週投稿されました。
NHK・BS放送(今年2月16日)をビデオ収録し、そこからトスカニーニがベートーヴェンについて語った内容を活字として採録されたそうです。忠実にトスカニーニの言葉を拾い出す作業は大変だったでしょう。おかげさまで、トスカニーニの素晴らしい、詩のような言葉を読むことができました。
「遙か彼方に眩しい光と見事な色と形が見えた」以下の言葉の素晴らしいこと! 音楽を語ることは詩でなければならないと、誰かが言っていたように思えます。まさにそのような言葉です。そして、「聖職者達は何も解っていない」という言葉の辛辣さと批評精神。

トスカニーニという名が出てくると、反射的にフルトヴェングラーが思い浮かんできます。二人は20世紀前半を代表する巨匠です。そこで、福間さんにならって私もフルトヴェングラーのベートーヴェン観を紹介してみようと思います。

フルトヴェングラーについてはあまりにも有名で説明を要しないと思いますが、簡単に触れておきます。生年は1886年。トスカニーニより19歳若くベルリンで生まれています。没年は1954年。トスカニーニが90歳まで生きて1957年に亡くなったのに対して、フルトヴェングラーは1954年に亡くなっています。68歳でした。福間さんが収録したムービーは1954年の年末に孫が撮ったものだそうですから、フルトヴェングラーが亡くなって1ヶ月後のことと考えられます。

トスカニーニとフルトヴェングラーは、よくライバル関係にたとえられます。指揮も対照的だと言われます。また、音楽以外でもトスカニーニがムッソリーニのファシスト政権を嫌って米国に亡命したのに対しフルトヴェングラーはナチスドイツに踏みとどまったことから第2次大戦後ナチ協力を疑われたこともあり、対照的に語られます。ナチ協力の嫌疑は、ナチスによる作曲家の排斥事件(ヒンデミット事件)に厳しく抗議したこと、戦中ではユダヤ人演奏家の脱出を援助したことなどが認められ、1947年に音楽界に復帰できています。
二人はライバル関係にあったというのも間違いだと言っていいでしょう。まず19歳もの年齢差があります。ライバル関係にはなりません。さらにトスカニーニは1936年、自らの後継者としてニューヨーク・フィルの次期音楽監督にフルトヴェングラーを指名しました。つまり、「ナチスドイツから逃れて、ニューヨークへ来いよ」と暗に亡命をすすめたのだと言えます。二人は互いに認め合った関係だったのです。
米国行きはナチスの妨害で実現しませんでした。ナチスは純粋のドイツ人で世界的な巨匠を国外に出したくなく、ゲルマン民族の優秀さに利用したかったのでしょう。
ベートーヴェンがロンドンに赴くことをウィーンの支援貴族たちが押しとどめたことと併せて考えますと、音楽また音楽家と国家または政治との関係に複雑な思いを抱かせます(これは余談です)。

フルトヴェングラーの偉大さ、曲に対するアナリーゼ(解析)の凄さなどについては、多くの書で触れられているので二人の関係のみを簡単に紹介しておきました。以下、フルトヴェングラーのベートーヴェン観を紹介します。テキストはフルトヴェングラーが書いたさまざまな論文や評論を収めた『音と言葉』です。芳賀檀訳、新潮文庫版です。

ベートーヴェンと私たち
              ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

 かくてベートーヴェンの音楽は私たちにとってあらゆる傾向を合一させる巨大な実例となりました。音の言葉と魂の言葉との間の合一。音楽の建築と、人間の心的生命のうちに根を下ろし、錨を投じた劇(ドラマ)との間の合一。特に「私」と「人類」と、個々の不安に脅かされた個人の魂と、いっさいを包括する共同体との間の合一。ベートーヴェンが予見的な透徹さをもって彼の最後のシンフォニーの使命の中に告示したあのシラーの言葉。「兄弟らよ。星、輝く天の穹窿の上に、愛する父神は住みたまう」を彼が歌うとき、それは説教者の言葉でもなく、また--煽動家(デマゴーグ)の言葉でもありません。それは彼が芸術の仕事の端初から、生涯をかけて生きてきたものでした。これこそ、またなぜ今日の人間も彼の歌を聴いて感動するかという理由をなすものでありましょう。(1951)

バス:桐田豊正
コメント
活発になってきましたね

最初は閑古鳥が鳴いていたこのブログも、ずいぶんたくさんの方が書き込んでくれるようになり、活気が出てきましたね。
ベートーヴェン論となると、やはり誰かがロマンロランを書かないと……
日本人では山根銀二。

こうしたアカデミックなものも良いですが、楽しいやつもどんどん出てくるといいですね。女声の皆さんが“バイキングにいこう”なんていっていたようだから、そんなお誘いも出たら面白い。
2009/06/09(Tue) 00:14 | URL | バス・T | 【編集
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